SIP地域物流ネットワーク化推進協議会は、SIP「スマート物流サービス」を活用した、中ロット貨物パレット共同輸配送の構築、普及並びに啓蒙を目指します。

設立総会を開催しました(11/16)

2021/11/26

2021年11月16日、SIP地域物流ネットワーク化推進協議会の設立総会を開催(オンラインライブ配信)しました。

設立総会には、本協議会の87会員の内の30会員が出席し、来賓として、内閣府、SIPスマート物流サービス プログラムディレクター、国土交通省、経済産業省にご臨席いただきました。また、メディアの皆様にもご参加いただきました。

設立総会では、本協議会の呼びかけ人である、SIPスマート物流サービス「地域物流」社会実装責任者 株式会社セイノー情報サービス 取締役 早川 典雄 氏から、本協議会の設立経緯を説明しました。
続く議案審議では、規約・役員・事務局・組織体制・事業計画が審議され、全て満場一致で承認されました。

この結果、本協議会の役員として、座長には株式会社ローランド・ベルガー パートナーの小野塚 征志 氏が、運営委員長には東京大学 先端科学技術研究センター 教授の西成 活裕 氏が就任しました。
本協議会の事務局は、株式会社セイノー情報サービスが務め、事務局長には同社取締役の早川 典雄 氏が就任しました。

本協議会の事業活動は、共同輸配送ネットワークの構築、普及、啓蒙に向けた検討および協議としました。
今年度は、2021年12月、2022年1月と3月の計3回のワーキングを開催する予定です。

 

左から、小野塚座長、早川事務局長、西成運営委員長

協議会の設立趣旨

呼びかけ人
SIPスマート物流サービス「地域物流」社会実装責任者
株式会社セイノー情報サービス 取締役 早川 典雄 氏


内閣府が進めているSIPスマート物流サービスの研究開発の一つである「地域物流」の代表研究機関として、2019年12月より「プロトタイプのデータ基盤構築とその概念検証」、続く「プロトタイプ基盤の高度化および社会実証」の研究開発ステップを終え、現在、社会実装に向けて活動しております。

「地域物流」の取り組みは、国内トラック輸送おける人手不足、ドライバーの低賃金・長時間労働、低積載率といった問題を正面から捉え、これらの問題を荷主企業間、荷主企業と物流企業の「つながり」をデジタルトランスフォーメーションすることで解決を図るものです。
具体的には、荷主企業にある受発注計画情報やトラックの空きリソース情報を早期に共有することで、輸送の平準化やシェアリングを促進し、常態化が懸念される物流クライシスや物流需給ギャップの解消を目指します。

このため「地域物流」の社会実装を目的とし、荷主企業と運送事業者との新たな「協働」を促す枠組みとして、任意団体、SIP地域物流ネットワーク化推進協議会を設立します。
本協議会では、異業種企業間の「連携・協働」による「持続可能な地域物流」を実現するため、まずは「中ロット貨物パレット共同輸配送」の構築、普及ならびに啓蒙に取組みます。

来賓挨拶

内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 SIP/PRISM担当
企画官 萩原 貞洋 氏


戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、従来の府省や分野の枠を超えたマネジメントを行うことにより、イノベーションを実現して、社会的な課題を解決に導くための国家プロジェクトです。これにより真に重要な社会的な課題であったり、日本経済を再生できる様な世界を先導できる課題に取り組んでいます。

物流業界においては、これまでの取り組みで質の高いサービスが実現していますが、物流クライシスという言葉に代表されるように、物流サービスが限界に達してきて大きな社会的な課題となっています。

そこで、田中プログラムディレクターの下で、スマート物流サービスというプロジェクトを開始しました。サプライチェーン全体の効率化を図り、物流・商流分野でのデータを活用した付加価値や新たなビジネスモデルを創出するとともに、物流・小売業界での人手不足や生産性が低いといった課題解決を目指すプログラムとなっています。

SIPでは自動運転・海洋資源開発・防災情報の共有など、様々な社会的な課題に取り組んでいますが、物流は我々の日常生活に非常に密接した課題になっていることから、大きな注目を集めています。

本協議会においては、物流事業者の方々をはじめ、荷主企業の方々も多数入会されており、地域物流モデルの社会実装の定着と発展、スマート物流サービスの早期実現に繋がることを期待します。



内閣府政策統括官付SIPスマート物流サービス担当
プログラムディレクター 田中 従雅 氏


スマート物流サービスは、この物流クライシスと言われる中で、サプライチェーン全体を最適化するために情報を繋ぎ合わせて計画的な物流をしようとするのが大きなスローガンです。

この中で研究テーマとしては、いくつか分かれていますが、ただプラットフォームを作るだけではなく社会課題を早期に解決するために、4つのモデルを実装していくことに取組んでいます。その中の一つが、地域物流モデルです。協議会を設立するなど一早く活動を進めています。

このモデルは、点と点が結びついて最終的には面を抑えることに繋がり、Society5.0の一つのモデルと言われているフィジカルインターネットの様な、未来のサスティナブルな物流にまで繋がっていくと期待しています。

本日ご参加の皆様におかれましては、大きな目的の理解と発展にご協力いただけましたら幸いです。日本の未来に繋がっていくと期待していますので、ぜひ積極的なご理解と参加をお願い申し上げます。



国土交通省 総合政策局 物流政策課 課長
髙田 公生 氏


概念実証あるいは実証実験ということで、地域内と地域間の物流について、様々な取組みを積み上げられたかと存じます。その過程の中で様々な課題を見つけ、また人手不足など、物流を取り巻く昨今の厳しい状況などを組み合わせて、新たなモデルを築き上げようとされています。
このモデルを築き上げるにあたって、データを活用し、将来の解決策として軸に据えて、これから社会実装に取組まれると理解しています。

物流を取り巻く環境は、人手不足をはじめとして厳しいと言われていますが、一方でこれを機に、様々な利用者の方々が物流をより良くする可能性を秘めています。その先陣としてSIPという枠組みを活用して、これから地域物流をより良く発展されていくと期待しています。

こうした物流の諸課題のために、多くの方々が集まっていただいて、共同配送や効率化に向けてデータを活用しながら、さらに地域物流をより多くの方々にご利用いただけるよう発展ということで、皆様方、我々も一緒になっていければと考えています。



経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室 室長
中野 剛志 氏


日頃から社会経済にとって重要な社会インフラである物流を支えていただいている、ご参加の皆様に心からの敬意を表するとともに深く感謝申し上げます。

物流を取り巻く環境は大きく変化し、ECの増加やトラックドライバーの不足などを起因として、物流の需給バランスが崩れて、これまで運べたモノが運べなくなることや物流が経済活動の制約になる恐れがあります。

このため物流の徹底的な効率化が喫緊の課題になっています。持続可能な物流体系を構築し、市場での競争優位を維持していくために製造事業者や販売事業者といった荷主事業者は、経営戦略として物流を含めた形でサプライチェーンマネジメントを進めていきまして、調達・生産・物流・販売の全体を最適化していくことが非常に求められています。
加えて、業種業態を超えてモノやデータを標準化し、それを共有化することで社会全体として更なる物流の効率化や高度化を図ることができます。

欧州やアメリカを中心に、物流に関する情報や資産などを企業さらには業界の枠を超えて共有し物流の効率化を図る考え方、いわゆるフィジカルインターネットという考え方が注目されています。我が国におきましても経済産業省と国土交通省の両省が一緒になり、先月からフィジカルインターネット実現会議を開催しています。

SIPスマート物流サービスの物流・商流データ基盤は、このフィジカルインターネットの実現に向けた、垂直統合なり水平連携になるように促進する重要な要素です。
また、データ基盤を介して商流情報を早期に共有し、計画的な輸配送を行う本協議会の事業は、正にフィジカルインターネットの萌芽とも言うべき先駆的な取り組みであり、今後の日本の物流高度化に向けてさらなる取組み拡大を進めていただくことを期待しています。

協議会役員の挨拶

座長 小野塚 征志 氏
(株式会社ローランド・ベルガー パートナー)


皆様ご承知の通り、物流は、今、まさに危機的な状況にあります。モノを運びたくても人が集まらない、ドライバーが不足しています。このままでは、今まで普通に運べていたモノが運べなくなり、日本経済は機能不全に陥るでしょう。

一方で、物流の世界では、ロボット・AI・自動運転などの様々なイノベーションが実現化しつつあります。こういったイノベーションの実現により人手不足は解消し、ゆくゆくは、人なしでもモノを運べる、出荷できる、保管できる世界がやってくるかもしれません。
イノベーションの実現は、単に、今までヒトがやっていた作業をロボットや機械に置き換えるだけではなく、物流のビジネスモデルを変えるインパクトをもたらすはずです。

たとえば、自動運転トラックを考えてみると、最初は高速道路から始まるはずです。ドライバーは乗っていなければならないけど、寝ててもいい、副業をしててもいい、という時代がやってきます。その次の時代には、高速道路では人が乗っていなくてもいい、となります。

東京から名古屋にモノを運ぶとすると、用賀までドライバーが運転してきて、そこでトラックを降りて、小牧まで自動運転される、そんな時代がやってくるわけです。その用賀までトラックを運転してきたドライバーは、おそらく、小牧から無人走行されてきたトラックに乗り込んで、用賀から先の一般道路を運転するはずです。
つまり、「高速道路は無人走行」という時代がやってきたとき、「このトラックは私のトラック」という働き方は成立しなくなる、ということです。「一台のトラックを皆でシェアすることが当たり前の世界」になるわけです。

今、トラックの積載効率はどんどん悪化しています。多くのトラックは、特定の企業の荷物を運んでいる。その企業の出荷ロットが小さくなれば、その分だけ積載効率が悪化するわけです。
この状況が「トラックは様々な企業の荷物を運ぶのが当たり前の世界」に変わったら、出荷ロットが小さくなっても、積載率は落ちなくなるはずです。いわんや、積載率は大幅に向上するはずです。

最近、11月から「相乗りタクシー」が解禁になりました。もしかしたら数年後には、「タクシーは一人ではなく、皆で安く乗るのが普通」になっているかも知れません。この相乗りタクシーは規制緩和のお陰かと思いますが、「配車アプリの登場によって同じ方向に行きたいヒトをマッチングできるようになったから」というテクノロジーの進化があったことは間違いありません。テクノロジーの進化が、タクシーの乗り方を変えようとしているわけです。
同じことは、物流にも当てはまるのではないでしょうか。

本協議会を通じて、「トラックは様々な企業の荷物を運ぶのが当たり前の世界」を作り上げられれば、物流はよりサステイナブルな存在になります。イノベーションが後押ししてくれる未来だと思います。それは、物流産業のみならず、モノを運びたいヒト、受け取りたいヒト、日本に存在する大多数の企業・個人の皆様にとっても、有意義なことでしょう。

本協議会にも、すでに様々な企業・個人の皆様が参画いただいています。ぜひ、皆様と、そういう未来を築ければと思っております。本協議会が、物流を「協調領域」として進化・発展させること、日本経済全体の未来の支える取り組みになることを祈念いたしまして、就任のご挨拶とさせていただきます。



運営委員長 西成 活裕 氏
(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)


地域物流は、昔から興味と心配をもって見ていました。日本は世界一の高齢化国家で世界中が注目しています。2位がイタリア、そしてドイツと続いています。この国々は、この高齢化をどう迎えるかということですが、地方では限界集落ができており、どうやってそこで物流を維持していくのか、共同で考える取り組みが必要なのではと思っていました。共同輸配送ネットワークは持続可能な物流モデルとして期待しており、今回、運営委員長をお引き受けいたしました。

物流の効率化のために必要な取り組みは3つあると考えていまして、(1)トラックや倉庫などの空いている場所を共有し合う「シェアリング」、(2)トラックや倉庫などの空きと、働いている人や運びたい・荷物を置きたいといったニーズと保管や運送などのシーズの「マッチング」です。

そしてこの2つだけ足りないということを意外と色んな方が伝えていませんが、ニーズとシーズの数はいつも一緒ではなく、ニーズが多くシーズが少ない状態です。例えばトラックバースを考えると、3台しか着けない所にトラックが12台来たら、トラックの待ちが沢山発生してしまいます。
そういったことで、(3)事前の調整によって少数のリソースを多数で活用する「アジャスティング」が必要になってきます。
これが実現すれば、物流は効率化、持続可能に繋がっていくと考えています。

地域物流は、様々な企業の商流・物流情報を合わせることで、「様々な運送会社のトラックの空きスペースのシェアリング」と「運送依頼とトラックの空きリソースのマッチング」と「調整によるアジャスティングでドライバーの待機時間の削減や物流の平準化による安定化」を実現して、効率的な共同輸配送ネットワークを構築することを目指しています。

経済産業省でフィジカルインターネットを本格的に普及させていこうという動きが始まりましたが、地域物流の取り組みは、物流革命であるフィジカルインターネットに正に繋がっていくと期待していますので、企業の壁や商慣習を乗り越えて、ぜひ実現させたいと考えています。微力ながら本協議会の活動を盛り上げられればと考えています。

協議会事務局長の挨拶

事務局長 早川 典雄 氏
(株式会社セイノー情報サービス 取締役)


弊社は本協議会の呼びかけ人でもありますので、その重責を痛感しております。
微力ながら、荷主企業の皆様と運送事業者と新たな「協働」を促す枠組みとしての「地域物流」を創り上げていきたいと考えております。ぜひ、皆さまのご協力ならびにご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。